百鬼夜行抄(15)/今市子
高橋葉介が完全な“ホラー”なら、今市子は“怪談”である。
「百鬼夜行抄」を読む度に、その日本的な恐怖に慄きつつ感動しています。
京極夏彦氏の受け売りではありますが、「怪談」というジャンルは実に稀有で、表現しにくい・・・・・・意図しようとすればするほど遠のくような、逃げ水のようなものだと思うのです。
しかし今市子さんは天性の才で、それをさらりと描いている。
化け物自体よりも“場”が怖い。
粟粒立つ、混沌とした”何だか分からないモノ”の空気。
不条理で“ただそこに在る”恐怖。
滲み出すような、・・・・・・・土のにおいがしますよね。
巻を追うごとに「浄霊」や「お祓い」といった、お馴染みの“分からないモヤモヤをきっちり割り切る為のツール”が用意されていくのですが、
それでも何かが残ってる、んですよ。(笑)
私はそれがとても好きです。
ふとした時に迷い込む無音の異世界を、あんなに自然に描けるなんて。
(彼女の、し・・・んとした静寂の絵が、それを助けているのでしょう)
コメディタッチなのに、全くその奥ゆかしさを失っていないし邪魔もしない。
現代モノなのに、あちこちで古き日本を感じるし。
(家屋も妖怪もそうですが、全てを受け流そうとするあの精神が・・・・)
極めて珍しい漫画だと思うんですけども、今更な話なんでしょうねきっと。(笑)
ちなみに、同時購入の「B級グルメ倶楽部(2)」(著・今市子)もやっぱり面白かった!
女性向けの所謂ボーイズラブ漫画なんですが、このジャンルにありがちな“ファンタジー”が無い。
今さんは、現代社会にちゃんと生きている彼らの、可笑しかったり哀しかったりする日常を、真っ当な目線で描きます。
少数派の想いを描いた「他人の趣味」は実に秀逸。
決して一般性を失わないその描き方は、ジャンルに対する隔たりを少なくしてくれています。
良いですね。私はこの人の味わいが大好きですよ。
・・・引用していて気付いたけど、今さんの漫画には常に、そこはかとない孤独が垣間見えますね。
その中で、踏み込みすぎない優しさで、そっと寄り添う人々を彼女は描いているような・・・・・そんな気がしてきました。
「でも寂しいからって、運命と偶然を取り違えないでね。
僕はただの通りすがりですから。
こういう力を持った人間は皆一人なんですから」
(百鬼夜行抄(15)/今市子、朝日ソノラマ。2007年)
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